物語のおわり

物語のおわり
湊 かなえ
朝日新聞出版

内容紹介: 妊娠三ヶ月で癌が発覚した女性、父親の死を機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする男性……様々な人生の岐路に立たされた 人々が北海道へひとり旅をするなかで受けとるのはひとつの紙の束。それは、「空の彼方」という結末の書かれていない物語だった。山間の田舎町にあるパン屋 の娘、絵美は、学生時代から小説を書くのが好きで周りからも実力を認められていた。ある時、客としてきていた青年と付き合い婚約することになるのだが、憧 れていた作家の元で修業をしないかと誘いを受ける。婚約を破棄して東京へ行くか、それとも作家の夢をあきらめるのか……ここで途切れている「空の彼方」と いう物語を受け取った人々は、その結末に思いを巡らせ、自分の人生の決断へと一歩を踏み出す。湊かなえが描く、人生の救い。  (引用)

人生の岐路に立たされた人が,「空の彼方」という結末が書かれていない小説の結末を考えることを通して自分の人生に対する決断をするという話.

山間の田舎町にあるパン屋の娘である絵美は山の向こうの景色を想像して物語を考える日々を過ごす.小学生の頃に引っ越してきた道代の勧めで小説を書く.道代が引っ越し,中学校に進むと小説を書く時間などなく,店の仕事を手伝う毎日.毎日ハムサンドとハムロールを買うハムさんなる高校3年生の少年に渡すお釣りを間違えたことからハムさんとの交流ができる.話の流れで隣町にあるハムさんの学校に行くことになるが,絵美は家を出る際に両親に友達と遊ぶ?と嘘をついて家を出る.帰宅時に親に嘘がバレハムさんと一緒に怒られたが「娘さんと真剣に付きあわせてほしい.ただ,大学に合格すれば町を出るので,就職のために町に戻った時に許してもらえるか返事をしてほしい」と語りだすハムさん.というわけで,婚約したような関係になる.ハムさんは北海道大学に合格し,絵美とは遠距離恋愛となり,手紙をやりとりすることを約束する.ハムさんとの手紙のやりとりを繰り返している中,小学校の頃に転校してしまった道代から今でも小説を書いているのかと手紙がくる.絵美はハムさんにちょっとずつ小説を書いては送る高校生活を送る.高校卒業後はパンの専門学校?に通う.ハムさんは就職のため,絵美は専門学校を卒業し,地元に戻った時に再び道代から手紙が送られてくる.道代は有名な作家である松木流星のもとで弟子兼下宿人としての生活を送っており,かつて絵美が書いた作品を師匠に見せたところいたく気に入ってくれた,可能なら東京に出てきて作家を目指さないかという内容だった.絵美は3年間東京に行ってみたいと言うものの,両親とハムさんの反対にあう.ある朝絵美が家出をして東京に向かおうとバスを乗り隣町の駅に降り立った所,そこにはハムさんが.

といった内容の小説が「空の彼方」.この物語の結末は書いておらず,あたかも読者に結末を想像させたいと言わんばかりの終わり方.紐で閉じられた「空の彼方」は人生の岐路に立たされ北海道を旅している旅人達に受け継がれていく.読み手の立場によって感情移入する登場人物や考えつく結末は異なるが,唯一つ共通するのは「空の彼方」の結末を考えることによって自分自身の人生に対する決断・決意を下すという点.

違和感を感じたのは最後から二番目の章.主人公と思われる男性は話を読む限り北海道の旅人という感じではない.徐々に人生の岐路に立たされているということは理解できるのだが...と思っていると違和感を感じる文章が.ページを前に戻るとアレ?ひょっとしてと更にページを前に戻る.そこで「ああ,やっぱり湊かなえは巧妙に本筋を隠して書いてるんだな」と思い返す.

今回も非常に面白い作品だった.湊かなえの作品はハズレが無い.

最後から二番目の章に出てくる主人公の孫の名前は萌.そう,第二章で智子に「空の彼方」を渡した萌と同一人物.従姉にもらったと言っていた小説は,実は萌が祖母の部屋で見つけたものだった.つまり,最後から二番目の章の主人公は絵美の婚約者だったハムさん.そして,その妻である萌の祖母は「空の彼方」の主人公 絵美.

最終章は萌の物語.萌は祖母の絵美と北海道を旅行中.前章で不登校であることが書かれている萌だが,不登校になった理由が少しずつ明らかになる.萌は絵美に対して「夢を諦めさせた祖父をどうやって許せたのか」尋ねるが,実は「空の彼方」には続きがあり,結末を読んでいなかった萌に対して絵美は結末を語る.ハムさんが駅で待ち構えていたのは絵美を連れ戻すためではなく絵美を見送るためだった.そして,東京にいる出版社で働いている知り合いの連絡先を教え,彼を頼るように伝える.結局,絵美は東京に行くことをやめるが,件の出版社の人に自分の作品を送り,最終的に一つの作品を出版することになる.

絵美は萌に対して全てを見通した上で萌の決断を促すような話をし,萌は自分の人生に対する決断をするという所で話が終わる.

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